いいかげんに気付きなよ。
「あ、葵くん!は、放してくれる……?」
「……やだ」
「や、やだって……駄目だからっ!」
「だめってなにが?」
「こ、こーゆう急なのとか」
「急じゃなきゃいいの?」
「そっそういう問題じゃないからっ!!」
あー言えばこー言う。
駄々をこねる子供とのやり取りみたいなのに、
耳元に落とされる声は子供よりずっと低くて
抱き締められるからだは子供よりずっと大きくて。
「もっもう無理!!」
どんっと胸を両手で押すと
しぶしぶ緩められた腕からどうにか抜け出すと、彼の甘い視線に捕えられる。
「……え」
ようやく出てきたのはかすれた声で、
自分の声とは思えないほどで彼の様子に動揺してるのが分かる。
「……はぁ。いっそのこと伝えないまま卒業しようかなと思ってたけど。やっぱ無理そう」