君の息にピリオド.

共犯者の息

普通は警察署や刑務所で話すのだが、
これは紗羅の病体を考えてのこと。

彼女が退院するのは1ヶ月後。
それまでずっとこの事件を引きずるのは
あまりにも酷だと考えたからだ。

私たちは用意された椅子に座る。
艶子は共犯者も近くの席だ。
危害が加えられないよう離れているけれど。

足音が近づいてきた。
心臓はどんどん速くなり、
あの日の恐怖が頭を霞む。しかし、今。

私の周りには大好きな友人がいる。

何も怖くない。


共犯者はあの人回らない風貌でやってきた。マスクも同じ、墨をたらしたように真っ黒で髪の毛はもっとボサボサに見えた。

彼女の横には警官が、
後ろには退路を塞ぐように立っている。

共犯者はパイプ椅子に腰をかけ、
“マスクを外した”。


表情は固い、
真っ直ぐこちらを見るその瞳は。平坂。


「お久しぶりです。
私はこの事件の当事者であり、


“平坂 歩”の母親でもある≪平坂 真由美≫と
申します。」
< 58 / 76 >

この作品をシェア

pagetop