追放された私は、悲劇の聖女に転生したらしいです
 厚意に甘えまくり、まず、スープから口に運ぶ。煮込まれた玉ねぎの甘さと、出汁の旨味が絶妙で、疲れた体にじんわりと染み渡る。確かに、ソラスで評判になるわけだ。商人や労働者が客に多いのは、この疲れを癒す料理があるからだ。
 次に口にしたパンは、濃い味のスープと、濃厚なオムレツとのバランスを考えているのか、若干薄味だ。
 でも、これが実に旨い! 思わず、にやけてしまうくらいの美味しさに、私の幸福度はMAXになった。

「ディオ様。早速ですが、明日、宮様との面会の許可が下りました」

 あ、また、物騒な話かな? と、素知らぬ振りでパンを口に放り込む。

「そうか、わかった」

「素直に渡してもらえるでしょうか? あの方のことですから、約束の物に飽き足らず、無理難題を吹っかけてくるのではと……」

「まあな。しかし、こちらには、ララがいる」

 うぐっ、と、喉にパンが詰まる。胸を叩きながら急いで水で流し込むと、こちらを見ているふたりと目が合った。ララがいるって、それ、私を巻き込む気満々ですよね。
 なにも知らない、いたいけな自称旅商人を、物騒な話に巻き込まないで!

「え……っと、なにか言いました?」
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