追放された私は、悲劇の聖女に転生したらしいです
と、しらばくれてみる。もしかしたら、気のせいかもしれないからだ。

「明日、一緒に星見の宮様に会って欲しい」

「星、見の……は? いや、なんで私が一緒に?」

「あ、ごめん。そうか、不思議に思うよな。実は、俺と宮様は古い知り合いなんだ」

「へ? お知り合い?」

 おっと、状況が変わった。
 ディオと星見の宮様が古い知り合いだとすると、物騒だと思っていた話は、たいして物騒じゃなくなる。
 暦を友人に貰いに行くというなら、違和感はない。身分の高そうな宮様と、ディオが友人だというところの違和感は、ヘンルーダのバックストーリー(妄想)が補完してくれる。
 ヘンルーダが実はソラス国の貴族令嬢で、実家から逃げているとすればディオの潜伏理由にもなる。
 そして、宮様は全てを知った上での協力者。宮様の一存で、グリーランドに暦を渡したとしても、どこにもおかしいところはない……よね?
 ディオの一言により、私の懸念はほとんど吹っ飛び、胸につかえていた疑問は無くなった。

「宮様に会って暦を貰うついでに、ララを紹介しようと思うんだ。グリーランドの頼もしい戦力として」
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