追放された私は、悲劇の聖女に転生したらしいです
 でも、あなたは笑っていた。会えて嬉しいと優しく手を握ってくれた。その気持ちが、どれだけ私の心を温かくしたか……おかげだなんて言わないで欲しい。救われたのは、私の方なのだから。

「あの、ひとつ疑問があるのですが、そのような大事に陛下は気付いてないのでしょうか?」

 恐る恐るガノンが尋ねた。ファルナシオン国王陛下は、大病を患い、部屋からも出られないと聞いた。その代わりにすべての政務を宰相が執っていると。
 ガノンの問いかけに、ヘンルーダは静かに目を伏せ、ディオは苦々しい顔をした。

「父上は、もう亡くなっていると思う」

「は? どういうことでしょう」

「火事で俺たちが逃げたあと、父上の死を予見したのだ。母上と俺の死を訝しみ、調査をしようとしたのを、宰相に阻まれ……生きていると見せかけているのは、王族に死者が多いと、また疑うものが出る。それを懸念してのことだろう」

「では全ては悪魔の狂言だと? ひどい、あまりにもひど過ぎる!」

 ガノンは机をドンと叩き、怒りを露わにした。
 私を始め、全員が同意見だったと思う。父親の死の予見をしてしまったディオだって、心に傷を負ったはず。
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