追放された私は、悲劇の聖女に転生したらしいです
「なんだと! お前私にそんな口を……」

「もうおやめなさい、殿下」

 低い声で宰相が言うと、アンセルが一瞬たじろいだ。

「言ったはずです。ララ様は大切なお方。その方が駄目だというなら駄目なのです。わかりますか?」

 その言葉は呪文のようだった。ゆっくり話しているけれど、どこか禍々しく抗えない何かを感じる。

「っ……わかった。では、今度にする。ちゃんと時間を作れよ」

「かしこまりました」

 宰相に気圧されたアンセルは慌ただしく去った。
 なんだかハリケーンに遭遇したみたいだ。回避出来ない自然災害とでも言うのがぴったりである。
 可能ならもう二度と会いたくないのだけど、そうもいかないかなあ。
 と、憂鬱な気持ちでディオを振り返ると、彼は彼らしくないくらい怒ったような顔をしていた。
 どうしたのかな? やっぱりアンセルがムカつくの?

「さあ、行きましょう。ララ様」

「へ? あ、はい」

 ディオの怒りの原因がつかめぬまま、宰相のあとを付いて行くと、やがて二階の豪華な部屋に案内された。
 広さはグリーランドのログハウス三個分。狭い我が家に慣れてしまった人間には広すぎる空間である。
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