追放された私は、悲劇の聖女に転生したらしいです
 こっそりと部屋を出ると、居間には誰もいなかった。ヘンルーダは自室にいるようで中から人の気配がした。
 私は家から出て、緩い崖を目指し暗い小道を進む。やがて、崖が見えてくると滑らないように慎重に登っていった。
 崖を登り切った場所には、大きな月が出ていた。王都のカレリアス邸の窓から見る月とは全く違う巨大な姿に、一瞬息をのみ立ち竦む。

「ララ? こんな時間にどうした?」

 声がする方を見ると、そこにはディオがいた。彼は大岩に座り、じっと私を見つめている。

「ディオこそ。眠れないんですか?」

「俺はここでぼんやり月を見るのが好きなんだ」

「へ、へえー。奇遇ですね。私もです」

 という嘘を吐き、ごまかしておく。
 ディオがいるかもと思って来たなんて、ストーカーみたいだもんね。

「ふうん。まあ、こっちに座りなよ。もっと綺麗に見えるから」

「あ、はい、どうも」

 好意に甘えて、ディオの隣の岩に腰掛ける。
< 81 / 275 >

この作品をシェア

pagetop