かぐわしい夜窓
巫女さま。


「別棟ではなく、わが家に飾りにいらっしゃいませんか」


へ、と間抜けな声がもれた。無意識だった。


「わが、や」

「ええ」


ばかみたいに繰り返す。


「歌まもりさまの、おうち? です、か?」

「ええ。狭いところですが、おいやでなければ」

「いやなはずが……!」

「それはよかった」


笑った顔がまぶしい。


おかしい。夜なのに。


「いまはまだ、あなたさまは歌うたい、神の巫女です。ですから、お名前も呼ばず、遠回しにお伝えするご無礼をお許しいただきたいのですが」

「い、いいえ。わかり、ます」

「わかりますか」

「……わかります。大丈夫です。うれしい、です」


わかるけれど、けれども、混乱していると丸わかりの返事しかできない。


「三日後の夜、私の名前をお伝えします。そのときになったら、きっと、私の名前を呼んでいただけますね?」

「……はい」


手は取られなかった。ただ礼儀正しく微笑み、背中を向けられた。


確信に満ちた、優しい声色が好きだった。
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