嘘つくつもりはなかったんです! お願いだから忘れて欲しいのにもう遅い。王子様は異世界転生娘を溺愛しているみたいだけどちょっと勘弁して欲しい。
「ウィルストン殿下、ええと、は、はい。ちょっと、まだ万全ではないのですが」

 正直に答えると、殿下ははぁ、と息を吐いていきなり私を横抱きにした。

 突然抱えあげられて、彼の吐息がかかる距離に顔が近づいた。首筋を見ると、あの夜の光景をパッと思い出してしまう。時折聞いた彼の苦し気な吐息と喘ぎ声。あの声が、この喉から出たのかと思うと、思わず顔が赤くなるのがわかる。

 そんな私の顔を見て、ウィルストン殿下はふっと顔を綻ばせた。

「ユゥベール、リアは体調不良だ。今日はここまでだ、いいな」

 そう言って出ようとすると、ユウ君が「でたっ、激ヤバスチール!」といってまた叫んでいた。が、その言葉は無視するように、殿下は私を抱えたままアトリエを出て、すたすたと歩いていく。

「殿下、殿下っ、私っ、歩けますっ」

 王宮の廊下を横抱きにされて移動するなど、誰かに見られたりしたら! と思うが、もう婚約者一歩手前なのだから、と再び現実を思い出す。誰に見られても、誤解されてもいいのだ。王子様は痛くも痒くもない。

「また殿下だなどと、他人行儀な。ウィルと呼べ、と言っただろう」

 どうやら向かっている先は、あの夜を過ごしたウィルストン殿下の私室のようだ。

「殿下っ、ダメっ! あのお部屋は、イヤ、イヤなのっ!」

「リア、そんなに嫌がるのか、仕方ない」

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