嘘つくつもりはなかったんです! お願いだから忘れて欲しいのにもう遅い。王子様は異世界転生娘を溺愛しているみたいだけどちょっと勘弁して欲しい。
 殿下は行先を変えて、園庭にあるガゼボに向かう。燦燦と輝く太陽に照らされた庭園は、気持ちの良い風が吹いていた。

「はぁっ、あ、ありがとうございます」

 ここなら、周囲の目もあるだろう。また流されて不埒な真似をされるのも嫌だった。

ホッとしたのもつかの間、ウィルストン殿下は私の隣に座り、私の手を握り締めた。





 コンコン、とアトリエの扉を叩く音がする。

「どうぞ~」

 僕のアトリエを訪れる者は少ない。いつまで経っても第二王子としての仕事もせず、引きこもって絵ばかり描いている僕だから、最近は声もかからなくなってきた。

「ユゥベール殿下、失礼します」

 そっと入って来たのは、恐らくそうだろうと思っていた通り、兄上の側近のチャーリーだった。

「いいよ、入って。で、どうしたの?」

 彼と話したことはないけど、乙女ゲームの攻略対象だから良く知っている。彼の性癖を考えると、この絵にくいついてくると思っていた。

「殿下、あの、そちらの絵ですが、つかぬことを伺いますが、1点ものでしょうか?」

「あぁ、このリアリムの絵? これはまだ一つだけど、スケッチなら何点かあるよ」

 あ、普段は真面目くさった顔をしている彼が、少し動揺している。やっぱり、ゲーム通りの性癖だ。

「このリアリム、ホットパンツが可愛いよね。こっちのスケッチは、足を中心に描いているけど、みる?」

< 101 / 197 >

この作品をシェア

pagetop