嘘つくつもりはなかったんです! お願いだから忘れて欲しいのにもう遅い。王子様は異世界転生娘を溺愛しているみたいだけどちょっと勘弁して欲しい。
 殿下の意外と逞しい腕に抱かれながら、私はこの人の腕の中から出ることが出来るのだろうか、とふと思う。意外と居心地のいいその腕の中にいると、「リア」と上から声がする。

「少しだけ、君に触れさせて欲しい」

 上を向いた私の唇に、殿下はやさしく唇を落とした。きっと、食らいつくようにキスしたいのだろうけど、今はそれ以上侵入してこない。

 優しいキスを受けながら、私はウィルストン殿下の姿の彼と、初めてキスをしていることを思い至る。

そして、それが全然嫌ではない自分に少し、驚く。

「リア、忘れないで欲しい。君の言葉は、いつも私の心を自由にしてくれる。あの時も、君とデートをした時の言葉など、君の予測もつかない行動が、私の視野を広げてくれる。それだけでなく、君が好きなんだ」

「ウィル、私」

 なぜか胸の奥がキュッと痛んで、泣きそうになる。こんなにも私を想ってくれている人を待たせていいのだろうか。でも。

「リアリム。残念だが時間のようだ。次は、王宮の夜会がある。エスコートは遠慮するけれど、ドレスは贈らせて欲しい」

 殿下はそう言うと、走って近寄ってくるチャーリーを見た。彼が来るということは、執務の時間が近いのだろう。

「ああ、そうだリア。君にこのピアスを渡したかったんだ。その、つけてもらえると嬉しい」

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