嘘つくつもりはなかったんです! お願いだから忘れて欲しいのにもう遅い。王子様は異世界転生娘を溺愛しているみたいだけどちょっと勘弁して欲しい。
 一瞬、ぞわりとした悪寒を背中に感じる。

 普段は、こんなにも華やかな色のドレスは選ばない。イザベラ様の腰ぎんちゃく要員としては、彼女より目立つような色のドレスを着るわけにはいかない。

 でも本当は、こういうガーリーな色のドレスが着たかった。

「似合うかなぁ、初めてだけど」

 桃色の髪をふわりと下す。今日は髪を巻いて、ふわふわとさせている。殿下はドレスだけでなく、私の髪色に合わせたカチューシャとアメジストのネックレスも贈ってくれた。

 全て纏うと、まるウィルストン殿下に抱かれているような気がする。少し気恥しい。

 イザベラ様と会うことを考えると気が重いが、遅かれ早かれ会わなければいけない。

 今日はディリスお兄様のエスコートで会場に入る。お兄様は「今日も綺麗だよ、自信をもって」と言ってくれるけど、夜会では極力目立たずにいたい。

 けれど、大広間に一歩足を踏み入れた途端、絡みつくような視線で注目された。

 どこからともなく、ひそひそと私のことを噂する声が聞こえてくる。殿下、とか、アトリエで、など、やはりユウ君のことだろうか。

 その噂話に気が付いたのか、お兄様はサッと顔色を変えて辺り一帯を睨みつけるようにみている。何かと見目の良いお兄様は、それはそれで注目される人だ。

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