嘘つくつもりはなかったんです! お願いだから忘れて欲しいのにもう遅い。王子様は異世界転生娘を溺愛しているみたいだけどちょっと勘弁して欲しい。
 何と答えればいいのだろうか。転生した記憶があるといっても、簡単に信じてはもらえないだろう。何と言っても、ここにはない異世界の記憶だ。どう頑張っても、証明することが出来ない。

 ただでさえ、アトリエに出入りしているのだ。恋愛関係にあると誤解されてもおかしくない。

 かつ、私はウィルストン殿下の婚約者候補でもある。傍で見ているチャーリー様にしてみても、私は何をしているのか、と言いたいことだろう。

「では、ウィルストン殿下にも希望はあるのでしょうか、最近、ひどく落ち込んでいたので、てっきり」

「え? 落ち込んでいるのですか? 殿下が?」

 いつも傍で仕えている人の言葉だから、本当に落ち込んでいるのだろう。でも、何故、

「えぇ、ウィルストン殿下は、先日、リアリム嬢と話した後からすっかり元気を失くしてしまって。なので私はてっきり、貴方が殿下に何か言われたのかと思っていたのですが、」

「そんな、そうでした、か」

 曲が終わりに近づいてくる。

「あの、私、ウィルストン殿下の気持ちは聞いています。その上で、少し、待ってもらっているだけで、」

 最後まで言い切ることなく、曲が終わりを告げる。二人でもう少し話をしたいけれど、チャーリー様も第一王子の側近と会って、非常に人気のある方だ。私一人と話しているわけにはいかない。

 ふと、周囲がざわついていることに気がつく。

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