嘘つくつもりはなかったんです! お願いだから忘れて欲しいのにもう遅い。王子様は異世界転生娘を溺愛しているみたいだけどちょっと勘弁して欲しい。
どこかから「あの方が」と、噂する声が聞こえる。

「リアリム嬢、少し見てきます。失礼」

 ざわつく方へ足をむけたチャーリー様は、その向こうから人をかき分けてやってくる人をみて驚いた。

「リア! ここにいたのか!」

 愛称で呼ぶその声は、ホールに響いて大勢の人が振り返る。

 これまで夜会や舞踏会、いかなる公式行事にも顔をださなかったユゥベール第二王子、その人が現れたのだ。

「ユ! ユゥベール殿下! どうしたのですか?」

 いつもはふわふわとしている蜂蜜色の髪を後ろに撫でつけ、黒の礼服をきちんと来たユウ君。優し気な濃いブラウンの瞳を輝かせて、私の方へ向かって歩いてくる。

 普段、姿を表さない第二王子が現れただけでなく、その王子が第一王子の婚約者候補であるリアリムを愛称で呼んだ。そのことに衝撃を受けない者はいなかった。

「リア、きょうも可愛いね。あ、ピアス、つけたんだね、うん、いい感じだ」

「ユ、ユゥベール殿下。あの、ここではちょっと、」

 ユウ君がピアスを見るために、私の耳を触ろうとする。その手の動きを止めるように、後ずさって距離をとる。

「あ、そっか。ゴメンゴメン、目立っているよね、僕。じゃ、ダンスしながら話そう」

 そう言ってユウ君は私の手をとると、ダンスフロアに連れて行く。次の曲は、もう始まっていた。

「ユウ君、踊れるんだ、」

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