嘘つくつもりはなかったんです! お願いだから忘れて欲しいのにもう遅い。王子様は異世界転生娘を溺愛しているみたいだけどちょっと勘弁して欲しい。
彼が近づくと、デビュタント達の間で黄色い声が上がる。

「兄上、踊りを代わりますよ。ホラ、あそこにリアリム嬢もいますので、兄上を待っているようでしたよ」

「ユゥベール、お前も少しは気配りが出来るようになったな、あぁ、彼女のところに行ってくるよ」

 何回も踊ったというのに、疲れを見せないウィルストン殿下が近づいてくる。

 夜会で殿下と踊ったことは、これまでなかった。私を見つめながら、まっすぐに歩いてくる殿下。その纏っている雰囲気は高貴で、優雅で、そして煌びやかなものだ。常人にはない、生まれながらの王子様としての風格を持っている。

「リア、待たせたね。今夜は特に、うん、綺麗だ。私の贈ったドレスがよく似合っているよ」

 甘いテノールが響く。本当はまだ、信じられない。本物の王子様から求婚されているなんて。

「私と踊ってくれるかな、リア、私の可愛い妖精姫」

「っは、はいっ」

 ふわりと笑ったウィルストン殿下は、私の手をとってダンスフロアに導く。デビュタント達と踊っていた時は、どこか冷たい壁を感じるような表情しかしていなかった殿下が、いきなり蕩けるような笑顔を見せた。そのことにまた、周囲の人たちはひそひそと囁き合う。

 さすがに踊り慣れている殿下のリードは、とてもスマートだった。

「ウィルストン殿下、とても、踊りやすいです」

「そう言っていただけると、嬉しいよ」

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