嘘つくつもりはなかったんです! お願いだから忘れて欲しいのにもう遅い。王子様は異世界転生娘を溺愛しているみたいだけどちょっと勘弁して欲しい。
 私の桃色の髪がふわりと舞う。殿下は曲に乗せて私を上手に舞わせてくれる。

「リア、後から、一緒に噴水を見に行こう。この庭園の噴水は、夜はまた格別だよ、」

「えっ、それは、私」

 夜会の時に、噴水の辺りは逢引きの場所になると聞く。そんなところに殿下と二人で行くとなると、何をされるかわからない。

「君のさくらんぼのような唇、はっ、本当に美味しそうだ」

 この会話を誰かに聞かれたらどうしよう、内心、とても焦ってしまう。

「で、殿下、お願いだから、そんなこと言わないで」

 思わずステップを間違えそうになるけど、殿下はお構いなしにリードを続ける。

「可愛いリア、君は私の恋人だろう? 恋人を満足させるのも、大切なことだよ」

 ひぇぇ、殿下、そんなことを言われると益々噴水のところなんて行けません。

「ありがたくご辞退申し上げます、殿下」

「そんな切ないことを言わないで欲しいな」

 そう言うと、ぐっと私を引き寄せて額に唇を当てた。ダンスの途中だから、きっと傍目には距離が近づいただけに見えるだろう。

だけど、不意に落とされたキスに、私は顔が真っ赤になっているのを感じる。

「でっ、殿下っ」

「ははっ、リアと踊るのは楽しいな、こんなにダンスが楽しいことはなかった。リア」

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