嘘つくつもりはなかったんです! お願いだから忘れて欲しいのにもう遅い。王子様は異世界転生娘を溺愛しているみたいだけどちょっと勘弁して欲しい。
 曲が終わりを告げるが、殿下は私の手を離さずにいる。そのままテラスを出て、園庭に繋がる廊下へ連れて行かれそうになったところで、声がかかる。

「殿下、そこまですよ。ほら、デビュタント達が待っています」

お約束のチャーリー様が、有無を言わさぬ雰囲気で殿下を止めてくれた。

「おのれ、チャーリー、お前、またいいところでなぜ止める」

 苦々しい顔をした殿下が睨んでいる。

「殿下、それが私の役割だからですよ。ホラ、遊んでいないで行きますよ」

 普段通り、チャーリー様は顔をしかめながらウィルストン殿下を連れて行こうとする。

「リ、リアっ、もう、私以外の男と踊るのではないぞっ、いいかっ」

 連れて行かれる殿下に、私は笑顔でひらひらと手をふった。良かった、これなら無事にお仕事(ダンス)をしてくれそうだ。

 私は痛いほどの視線を避けて、壁の花となるべく会場の隅へ向かう。ウィルストン殿下は、デビュタント達から挨拶を受けている。王子としての責務だ。

「すごいなぁ」

 さっきまでの情けないような顔と違い、今はキリっとすました顔をしている。かつては悩んだというけれど、今や立派な王子様をしているウィルストン殿下。

いつか、あの隣に立つことになる自分など、やっぱり思い浮かぶことができない。

 壁の花になるにしても、せっかくの夜会だ。王宮のデザートは美味しい。

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