嘘つくつもりはなかったんです! お願いだから忘れて欲しいのにもう遅い。王子様は異世界転生娘を溺愛しているみたいだけどちょっと勘弁して欲しい。
 根も葉もなくはない噂話は、だが少しずつ悪意が入っている。まるで、私が二人の王子殿下を誘惑して、堕落させているような話になっていた。

 ここで、興奮してはいけない。相手の思うつぼだと思うが、さすがにユウ君、ユゥベール殿下の悪口になると冷静ではいられなくなってきた。

「でも、あの引きこもり殿下が夢中になって、ますます淫らな絵を描かれているとのことですわ、なんて厭らしい」

「えぇ、絵を描くことしかできない王子なんて、乱れた方とご一緒になるのがよろしくてよ」

 イザベラ様とウィルストン殿下をくっつけたいのだから、自然と私とユゥベール殿下をくっつけようとしている。

 ここまで言われてしまっては、さすがに頭にくる。

何をどう言えば一番効果的か考えていると、ピチャッという音がして私の目の前が真っ赤になった。


――赤ワインをかけられた


 こんなドラマのようなこと、本当に起こるんだ、と妙に冷静な自分がいる一方で、せっかく殿下に贈ってもらったドレスが赤く染まっている。

 ふと目を上げると、怒りに満ちた顔をしたイザベラ様がいた。

「あら、失礼。手元が滑ってしまいましたわ、ごめんなさいね、あちらで着替えて来られたら? この場には相応しくなくてよ」

 ホホホ、とまるで高笑いするかのような声が聞こえる。

これまで黙って聞いていたけれど、これは酷い。

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