嘘つくつもりはなかったんです! お願いだから忘れて欲しいのにもう遅い。王子様は異世界転生娘を溺愛しているみたいだけどちょっと勘弁して欲しい。
これまで彼女の後ろにいた。彼女を心地よくするための言葉を選んで、彼女を褒めてきた。

それなのに、この仕打ちなのか。ほんの少しでも、私の話を聞く気もなかったのか。そっちがそうなら、

 私はすぐそばのテーブルにあった白ワインのグラスを手に持つと、彼女の顔をめがけてそれをかけた。


――バシャ


 まさか、私がイザベラ様に向かってワインをかけるとは思いもしなかったのだろう、周囲の人たちがシーンと静かになった。

ざわついていた会場も、何事かと思いこちらを見る。だが、わなわなと震えるイザベラ様よりも、赤ワインを被った私の方がひどい有様だ。

「貴方、この私に、何をしたかわかっているの?」

 まるで初めて侮辱されたように顔を歪めて私をみるイザベラ様。

あぁ、私は愚かにもこんな人の後ろにいれば、平和な人生を送ることが出来ると思っていたのだ。自分に呆れてしまう。

「されたことを、同じようにしただけですわ。イザベラ様こそ、あちらで着替えられたらよろしいかと」

 つい、衝動的にワインをかけてしまった。

これで社交界での死亡フラグは立ったも同然だが、もうどうでもいい。

そんな投げやりな思いに駆られてしまった私は、彼女をえぐる言葉を更に追加した。

「自分の思う通りに行かないことも、受け止めていくことが真の淑女ではなくて? イザベラ様。選ばれたのは、誰なのでしょうね」

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