嘘つくつもりはなかったんです! お願いだから忘れて欲しいのにもう遅い。王子様は異世界転生娘を溺愛しているみたいだけどちょっと勘弁して欲しい。
 私の言葉に、何も言えずさらに顔を歪めている。

悔しい、その気持ちのまま彼女は私の頬をめがけて手を出してきた。


――パァァン――


 私は頬をぶたれた。親でさえ、私の頬を叩くことなどなかった。痛みよりも驚きが勝り、頬を抑えて彼女を見る。

 プライドが傷ついたのだろう、私は叩かれた痛みもあるが、彼女をそこまで突き動かしてしまったのは、私の至らない言動の為だ。

「イザベラ様」

「た、たかが伯爵令嬢のくせにっ」

 昂ったイザベラ様は、そう呟いて私を見下げている。

 だが思っていた以上に、彼女が頬を叩いた音はホールに響いていた。騒ぎを聞きつけた人々が駆け付けてくるのが見える。

 ど、どうしよう、ただでさえ、今夜は注目を浴びている私だ。その私が赤ワインを浴びせられ、そして頬を叩かれている。

私の目の片隅に、駆け寄ってくる二人の男性が見える。一人はディリスお兄様で、もう一人は、ウィルストン殿下だった。

 ここで殿下に駆け寄ってしまうと、騒ぎはもっと大きくなるだろう。私は思わずディリスお兄様の方へ駆け寄った。

「お、お兄様。帰りましょう、ごめんなさい、我慢できなくて」

 お兄様の腕をとると、私の頬がぶたれて赤く、またドレスがワインを被っているのをみて、お兄様は一瞬顔をくしゃっと崩した。

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