嘘つくつもりはなかったんです! お願いだから忘れて欲しいのにもう遅い。王子様は異世界転生娘を溺愛しているみたいだけどちょっと勘弁して欲しい。
「ごめんなさい、お兄様。このことで、ミンストンの家にお咎めがないといいのだけど」

「それは、気にしなくていい。あの場にいた者ならば、どちらが被害を受けているかは明らかだ。むしろ、スコット公爵の方が今頃顔を青くしているだろうな」

 馬車は静かに夜の道を駆けていく。その揺れに身を任せていると、ディリスお兄様は「俺に寄りかかればいい」と、肩を貸してくれた。

 ガタンゴトンと揺れながら馬車は進んでいく。

 私は揺られながら、これからもこうした嫉妬の目を向けられるのだろうか、と思うと気持ちが一気に沈んでいくようだった。

 覚悟を決めなくてはいけない。そう思えば思うほど、私は憂鬱になっていく自分の気持ちをどうすればいいのか、わからなくなっていた。

 私の逡巡する想いを、ディリスお兄様は静かに受け止めてくれている。私の乱れた髪を撫でるその手は、とても暖かかった。





「チャーリーっ、お前っ、なぜ止めた。あんなっ、ワインをかけられ頬を叩かれていたのだぞ、リアリムはっ」

 興奮する俺は側近のチャーリーを連れて、執務室に移動していた。頬を赤らめて、手で押さえているリアリムの顔が思い浮かぶ。

「ウィルストン殿下。殿下があの場に出られますと、収拾するものも収まらなくなります。ディリスがいましたので、彼が適切に対処しました。殿下はお控えくださって、正解でした」

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