嘘つくつもりはなかったんです! お願いだから忘れて欲しいのにもう遅い。王子様は異世界転生娘を溺愛しているみたいだけどちょっと勘弁して欲しい。
「それは、そうだが。だがっ、リアリムの気持ちはどうなるっ」

 まだ怒りが収まらない。ただでさえ、今日のリアリムは注目されひどく噂されていた。

 俺としては、はやく俺の婚約者に決定したことを表明したい。そうすれば、今夜のような嫉妬による混乱から彼女を守ることが出来る。

「殿下、よく、お考え下さい。今日の騒ぎの原因を。リアリム嬢は滅多に夜会に出席しないユゥベール殿下と踊られ、そして直後にウィルストン殿下と踊られたのです。皆がいいように誤解しても、仕方ありません」

 チャーリーは冷静に説明する。わかる、わかっている。

 俺と、ユゥベールの失態だ。リアリムは、今はただの伯爵令嬢にすぎない。それも、議会でも力のない、ミンストン伯爵の娘だ。

 ドンっと机を叩く。俺は頭を掻きむしると、「くそっ」と悪態をついた。

 リアリムの返事を待つ、と言った俺だが、今夜のようなことがこれ以上起こることは耐えきれない。

 何とかして、彼女を守ることができないのか。

 焦る俺は、どうにもできない自分自身に怒りを覚える。あの、震える手をとって、支えたかった。

 やりきれない怒りに、俺は自分の拳を睨む。すぐにでも動きたいのに、動くことが出来ない。王子と言う身分を、この時ほど恨んだことはなかった。





 夕べは流石に疲れてしまって、着替え終わるとすぐに眠ってしまった。

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