嘘つくつもりはなかったんです! お願いだから忘れて欲しいのにもう遅い。王子様は異世界転生娘を溺愛しているみたいだけどちょっと勘弁して欲しい。
 私は朝の支度を終えると、部屋にかかっている夕べのドレスを眺める。

「殿下からのドレス、汚れちゃった」

 初めて着た、ピンク色のドレス。明るくて、ふわりとして、とっても女の子らしいドレスだった。

 それを、あぁ、赤ワインをかけられたのだ。

 まるで、殿下の想いを否定されるように。私には、ウィルストン殿下など相応しくないと言われているように。

 夕べのことを思い出すと、悔しくて悲しい想いが込み上げてくる。うぐっと涙をこらえると、ドアを叩く音がする。

「リアリム、入るよ」

 そっと私の部屋に入って来たのは、ディリスお兄様だ。昨夜は珍しく我が家に泊ったのだろう、今日はもうすぐに騎士団へ帰るのか、蒼い制服を着ている。赤く燃えるような髪をしているお兄様が着ると、本当に見惚れてしまう。

「お兄様、昨夜は、その、ありがとうございました」

 夕べ、馬車の中でお兄様に抱き寄せられた。この前も、お兄様の胸を借りて泣いたばかりだ。心配ばかり、かけているな、私。

「リアリム、体調はどう? 少しは落ち着いた?」

「あ、はい。調子はいいです。もう、元気ですよ」

 これ以上心配をかけないように、にこりと笑う。そうだ、気分転換に今日も何かお菓子を焼こうかな。

「そうか、少し話があるが大丈夫か?」

「え? えぇ、この部屋でいいのですか?」

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