嘘つくつもりはなかったんです! お願いだから忘れて欲しいのにもう遅い。王子様は異世界転生娘を溺愛しているみたいだけどちょっと勘弁して欲しい。
 自由になった手で、口を縛っていた紐を解く。

「ハァ、ハァ、ハァ、助かった」

 まだ、安心できないけれど手も足も口も、自由になったのだ。街道からもそれほど離れていない。

私は立ち上がると、迷子にならないように少年の折った枝を探しながら歩き、街道へ向かって歩いて行く。

 しかし薄暗い森の中で、木の根に躓いた私は大きく転んでしまう。

「いっ、痛い」

 思わず手をつくが、そこも木の根が張っていて腕に擦り傷を作ってしまう。

 転んだ時に足を捻っていたのか、右足の足首が痛い。骨が折れていないと思うけど、これでは長いこと歩けないだろう。

 引きずるようにして、少年の残していった枝を探す。日が暮れかかっている。何とかして、街道に出なければ。

 痛む足を庇い、ゆっくりと歩いていく。

(どうして、私、こんな目に合わないといけないの)

 どうしても気分が塞いでしまう。このまま森を出ることが出来なかったらどうしよう、、このまま、もうウィルティム様に、ウィルストン殿下に会えなかったらどうしよう、

 ほんの少し前までは、王宮にいたのに。会おうと思えば、会うことが出来たのに。もっと素直になって、会っていれば良かったのに。

 最後に会った夜会でのダンス。彼と踊った時、嬉しそうに口角を上げていた殿下。もう、踊ることもできなくなってしまうのか。

(ダメ、前に、前に進まなきゃ)

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