嘘つくつもりはなかったんです! お願いだから忘れて欲しいのにもう遅い。王子様は異世界転生娘を溺愛しているみたいだけどちょっと勘弁して欲しい。
 殿下に貰ったピアスを思わず触る。まるで殿下が傍にいるように、私を守っているピアス。

 気力を振り絞り前に進む。こんな時でも、少年が渡してくれたナイフと、折った枝に助けられている。

前に、前に進まなきゃ。

歩き続けるとその先に森が開け、街道が見えてくる。

(良かった、街道に出られた)

 ホッとした安心感と、もう痛くて歩けないという思いが重なり、私は街道で座り込んでしまう。マズイ、と思ったけれど、私はそこで意識を手放し道端に倒れてしまった。

 暮れかかっていた日は、もう落ちる寸前だった。






「ディリス、何かわかったか」

 彼と合流した俺は、急ぎウィルティムの姿となってマルーン市場に向かった。

「いや、どうやら、人混みに紛れていたようだな」

 目撃情報があれば、少しは追いかけるヒントになるのだが、どうやら、ここではこれ以上の情報が得られないだろう。

「しかし、リアリムはどうしてこの市場に来たのだろうな」

「あ、あぁ、一度、二人でここに来たことがある」

もしかすると、リアはあの日を思い出していたのかもしれない。あの、甘酸っぱい二人の初めてのデート。

「ここで、二人で串刺し肉を食べたんだ」

 あの時は、淑女らしからぬ仕草で豪快に肉を頬張る彼女に驚いたが、嘘のない笑顔が可愛くて、俺は彼女の笑顔をずっとみていたいと思ったのだ。

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