嘘つくつもりはなかったんです! お願いだから忘れて欲しいのにもう遅い。王子様は異世界転生娘を溺愛しているみたいだけどちょっと勘弁して欲しい。
 あの日はずいぶんと遠いようだが、まだ数日しか経っていない。

「リアリムが、串刺し肉ですか、アイツ、本当に何でも食べるな」

「あぁ、驚くことばかり言っていたな。インフレとか、貨幣価値がどうのとか」

 二人で、リアリムの規格外の行動や言動を思い出す。

「ウィル、リアリムは意外と行動力がある。ただの淑女じゃないから、一日や二日、野宿になろうが生き延びるタフさがある。信じよう」

 ディリスもつらいだろうが、彼は俺を慰めるかの如く、肩に手を置いた。

「あぁ、そうだな」

 苛立つ気持ちを抑えるが、俺の脳裏には彼女の笑顔ばかりが思い出される。それは甘い感情を伴うハズが、今は痛みしか湧き上がらない。

 彼女の笑顔をもう一度みたい。この手に、もう一度抱きしめたい。

あの夜、この手は確かに彼女の細い腰を掴み、己の滾る想いを何度もぶつけた。これでいいのか、と思いつつも差し出された身体を拒むことなどできなかった。

今も、彼女の胎の中には芽吹いた命がいるのかもしれない。いや、いて欲しい。そうすれば、思い切った彼女のことだ、俺との婚姻も気持ちを切り替えて進んでくれるだろう。

卑怯かもしれないが、どうやってでも彼女を手放したくはない。

だが、今は感傷に浸る時ではない。俺は意識を切り替えると、リアリムを攫った犯人を捕まえるべく聞き込みを続けた。





< 152 / 197 >

この作品をシェア

pagetop