嘘つくつもりはなかったんです! お願いだから忘れて欲しいのにもう遅い。王子様は異世界転生娘を溺愛しているみたいだけどちょっと勘弁して欲しい。
 その時、粉屋の親父がピンク色の髪の少女を覚えていた。

「あの可愛いお嬢さんか。あぁ、あんたはあの時一緒にいた騎士様だね、覚えているよ。小麦粉を買ってくれて依頼、何度か配達しているからね」

 市場の角に位置する店にいた親父に、昨日の昼間にリアリムをみなかったか、聞いてみる。

「昨日も彼女が一人で来たのだが、みなかったか?」

「昨日か、ちょっと待ってくれ、おーい!」

 粉屋の店主は、妻らしき人物と話をすると、彼女は要領を得たのか「ちょっと待っててよ、騎士様。今、近所に聞いて回ってくるよ」と言い、ささっと店を出てしまった。

「アイツの方が、噂話を集めるのが上手いのさ、騎士様たちは目立つから、ちょっと待ってくれよ」

「かたじけない、本当に助かる」

 今は、この市井の人たちが支えてくれることに素直に感謝する。一刻も早くリアリムを見つけ出し、また彼女とこの市場を歩きたい。

 僅かな足跡をたどるため、俺とディリスは再び来ることを伝え、一旦市場を後にした。






「いたた、あぁ……私? ここ、どこ?」

 見上げた天井は、見たことのない装飾がされている。明らかに貴族の客室と思われるその部屋は、豪奢ではないが明らかに質の高い木材が使われている棚が置かれていた。

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