嘘つくつもりはなかったんです! お願いだから忘れて欲しいのにもう遅い。王子様は異世界転生娘を溺愛しているみたいだけどちょっと勘弁して欲しい。
 最後の記憶は、街道沿いに出たところで終わっている。その後、どうやって私はこの館の、このベッドに寝ていたのだろうか。

 どうやら、痛めた足の手当てがされている。足首には包帯が巻かれ、腫れを抑える薬が塗られていた。

 王宮を出た時に来ていた簡易な服も、どうやら脱がされて上質な寝間着になっている。ここに連れてきてくれた方がどういった方かわからないけれど、私は助かったのだ。

 ほっ、と安堵の息を吐く。

 ここがどこかわらかないけれど、丁寧な手当に貴重な品も置いてある部屋に寝かされていることを思うと、地方の貴族の方が私に気づき、拾ってくれたのだろうか。

「助かった……」

 足首を捻ったこと以外に、身体に不調はない。声も出るし、目も見える。

 私が起き上がったことに気が付いたのか、扉をコンコンと叩く音がする。

「失礼するわね」

 女の人の伺う声に安心して、「どうぞ」と伝えると扉を開けて入って来たのは、彼よりも幾分青みのある銀色をした長髪の婦人が顔を出した。

「あぁ良かった、目が覚めたのね。貴方、丸二日も眠っていたから、良かったわ」

 私が起きて、目を開けていることを本当に嬉しい、といった風に見つめるその瞳の色は、とても珍しい緑色をしている。

「あの、ここは」

 掠れる声で聞くと、その婦人は丁寧に説明してくれた。

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