嘘つくつもりはなかったんです! お願いだから忘れて欲しいのにもう遅い。王子様は異世界転生娘を溺愛しているみたいだけどちょっと勘弁して欲しい。
「ここはね、花の都といわれる街よ、ご存知かしら? で、私はメイティーラと言うのだけど、メイ、と呼んでね。あぁ、今お医者様を呼んでもらうわ。貴方が目覚めたら、知らせることになっているの」

「それは、ご丁寧にありがとうございま、す」

 不安だった心を落ち着かせるその優しい言葉に、ふと心が緩む。気が付けば私は涙を一つ、流して喉を詰まらせていた。

「貴方、事情があって、あの街道にいたのでしょうけど、まずは、ここで落ち着いてね」

「は、はい、あの」

「いいのよ、まずは休んで頂戴」

 夫人は私から事情を聞きたいと思っていたのであろうが、突然涙を流し始めた私を気遣って、今は休むように、と言葉をかけてくれた。

 攫われた時は、感じていなかった恐怖が身体を襲う。もし、彼らが殺しのプロだったとしたら。もし、彼らが逃げる際に足の筋を切っていたら。もし、思い起こす想像は、恐怖ばかりで身体が震える。

 でも、そうした危険からは魔法石のピアスが守ってくれて、街道に出た私を助けてくれた方がいた。

 私は生きている。そのことに安心して、大きく息を吸い込む。そして、ハアッと吐いて気持ちを切り替える。

 二日も意識を失っていたとなると、王都では心配をかけているだろう。

その時、私が初めに思い浮かべたのは、ディリスお兄様でもお父様でもなく、騎士姿のウィルティム様でもなく。

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