嘘つくつもりはなかったんです! お願いだから忘れて欲しいのにもう遅い。王子様は異世界転生娘を溺愛しているみたいだけどちょっと勘弁して欲しい。
「じゃ、リアリム。次に会った時は、悩みをきちんと話すこと。俺も、力になりたい」

 優しく微笑むと、二人は立ち去って行った。

 今日はディリス兄に相談して少しスッキリすることができたけど、実は何も解決していない。

 私は重い足取りで騎士団の鍛錬場を後にした。王宮でのお茶会まで、あと少し。





 お菓子作りは、私にとっては唯一である趣味と、ストレス発散の一つ。

 粉とバターと砂糖で作る焼き菓子はもちろん、本当はババロアやプリンなどにも挑戦したい。
 けど、焼き菓子以外は差し入れするのが難しい。

 作りながら思い浮かべるのはいつも、ウィルティム様。

 貴族ではないと言うけれど、所作は美しく貴族としての教育を受けているように見える。

 時々、ふっといなくなる。兄は管轄外に行くことはあまりないが、彼は頻繁にいなくなる時期がある。

 本当に不思議な人。あの漆黒の瞳が濃紺に変わる時をもっと見つめていたい。けど。

「なんで貴族じゃないんだろぅ」

 もう結婚適齢期の私は、はやくお相手をみつけないと売れ残ってしまう。

 添い遂げることのできない相手を想う時間はない。だけど。

「だれか、いい人いないかなぁ、でも、ウィルティム様以上の方なんて、いないだろうなぁ」

 それに加えて、第一王子のお茶会にまで誘われてしまった。まずはそちらを何とかしなければ。

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