嘘つくつもりはなかったんです! お願いだから忘れて欲しいのにもう遅い。王子様は異世界転生娘を溺愛しているみたいだけどちょっと勘弁して欲しい。
「ウィルストン殿下、本日はお招きありがとうございました。代表して、お礼申し上げますわ」

 その場にいる令嬢の筆頭はやはりイザベラ様だ。

 今日もイザベラ様は絶好調に美しく装っている。
 金色の髪が映える、鮮やかな赤色のドレス。
 輝かしい胸元のネックレスは、殿下の瞳の色をしたアメジストだ。

 すごい、貴方の色に染まりたい、かしら

 誰しもが、スコット公爵令嬢が婚約者に選ばれるだろうと思っている。

「皆、寛いでください」

 ウィルストン王子は招かれている令嬢、一人ひとりと話をするように声をかけていた。

 王宮の庭園で立食形式で行われている為、煩いテーブルマナーなど気を使わなくても良さそうだ。

 それだけでもホッとしてしまう。いくら淑女教育を受けているといっても、こうしたノーブルな場所は苦手なままだ。

「あ、美味しそうなお菓子、やっぱり王宮で出される物は違うわね」

 今度、差し入れにするための参考にしようと、私はお茶菓子コーナーにウキウキとして立ち寄ったけれど、他の令嬢達は、王子にいつ声をかけてもらえるか、ソワソワしながら待っているようだった。

 えぇっと、こっちも美味しそう、あ、これは珍しい形をしているわ、どうやって焼くのかしら

 焼き菓子への興味はつきない。いっそこのまま、お菓子だけを見ていたい。
< 18 / 197 >

この作品をシェア

pagetop