嘘つくつもりはなかったんです! お願いだから忘れて欲しいのにもう遅い。王子様は異世界転生娘を溺愛しているみたいだけどちょっと勘弁して欲しい。
「もう一つ、いかがですか? あーん、してください?」

 言われた通りに口を開けてくれたので、もう一つ入れてあげる。よかった、美味しそうに食べてくれている。

 嬉しくてニコニコとしてしまう。やっぱり、手作りのものを美味しく食べてもらえることが、一番嬉しい。

「き、君も食べなよ、俺はもう、大丈夫だから」

 そう言ったウィルティム様は、一つクッキーを取り出すと今度は私に「はい、あーん」と言って差し出してきた。

「あ、ありがとうございます」

 これ、なかなか恥ずかしい。自分がウィルティム様にしていてなんだけど。されると恥ずかしいものだった。

「あーんっ」

 口を開けて、クッキーと共にウィルティム様の指も食べてしまう。チュパッと音を立てて指を引き抜いた彼は、非常に微妙な顔をしていた。

「君って、本当に飽きないよ。ダメだ。振り回すつもりが、振り回されているな、俺」

 またウィルティム様は斜め横を見ながら一人でぶつぶつと話していた。今日の彼は一人言が多い。





 ランチを終えた私たちは、午後の散策ということで公園を歩くことにした。今は薔薇の季節で、美しく咲いている。散歩道を歩きながら、程よい木陰のベンチを見つけた私たちは、そこに移動して少し休むことにした。

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