嘘つくつもりはなかったんです! お願いだから忘れて欲しいのにもう遅い。王子様は異世界転生娘を溺愛しているみたいだけどちょっと勘弁して欲しい。
 きっと頬が赤くなっている。血が顔中に上がってきているように思う。

「うん、もう一度、いいかな」

 そう言った途端に、また私の唇の上に、彼の唇を置いた。さっきよりも長く、そして暖かい。そして離れた唇のウィルティム様が、私を気遣うように囁いた。

「大丈夫かい? キスは初めてだった?」

 今、絶対に顔が赤い。ファースト・キスを、それも2度も。

「は、初めてですっ! もうっ」

「ははっ、ボーっとしているから、隙だらけだったよ」

 朗らかに笑うウィルティム様の顔を見ていたら、今度は「もっと俺に慣れるように」と言って、私を柔らかく抱きしめた。ふわりと香る匂いは、これまで嗅いだことのない男の人の匂いだ。

「あっ、あのウィルティム様、ち、近いです」

 抱きしめられて、目の前にはウィルティム様の厚い胸板しかみえない。

「あぁ、君をこのまま閉じ込めておきたい」

「あ、あの、ダメ、ですよ。私が頼んだのは、仮の恋人であって、その、こうしたことは」

 さっきから止まることのない胸の鼓動。抱きしめられる腕の力は変わらなくて、どうあがいても逃れられない。

 これ以上深入りしてはいけない、と、冷静な部分が私を止めようとしているが、その一方で今だけでも恋しい人と一緒に過ごしたい、という想いとせめぎ合う。

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