嘘つくつもりはなかったんです! お願いだから忘れて欲しいのにもう遅い。王子様は異世界転生娘を溺愛しているみたいだけどちょっと勘弁して欲しい。
 このまま、ウィルティム様と一緒にいられる身分であったら。なぜ、私は伯爵令嬢なんかに転生しているのだろう。

 庶民として出会っていたら、ウィルティム様ともっと自由に恋愛できただろうか。

「リアリム。また、こうして君の瞳を見つめていたい」

 甘く囁く声に身体が震える。こんなにも切ない想いになるなんて。

「ウィルティム様、私、私」

 声にならない言葉を飲み込む。本当は、大きな声で言いたかった。

――私、貴方のことが好きです、と。





「で? 殿下はお忙しい中に抜け出して、一体何をされていたのですか?」

 私は今、昨日のデートで抜けた穴を埋めるための膨大な書類を目の前にして、リチャードに問い詰められている。今日一日は、この王宮の執務室からは出られないだろう。

「いや、なんだ、その、ほら、婚約者選定のための、大切な時間だった」

「殿下、では、決められたとでも言うのですか?」

「あぁ、もう決めた。彼女しか考えられない」

「は? もう決めた、ですか?」

「あぁ、彼女だけだ。私の隣に立って、私と一緒に考えて、私を支えられるのは。彼女しかいない」

「それは、婚約者にはリアリム・ミンストン伯爵令嬢を指名するということですか?」

「もちろんだ。だが、まだ彼女は承諾していない。余計な手を出すなよ」

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