嘘つくつもりはなかったんです! お願いだから忘れて欲しいのにもう遅い。王子様は異世界転生娘を溺愛しているみたいだけどちょっと勘弁して欲しい。
「そうは言われましても、はい、ではもう少し様子をみましょうか。でも殿下、決められたのでしたら、早めに手を打たれた方がよろしいですね。他の令嬢たちに期待を持たせて、待たせている状況ですから、ね」

「あぁ、わかっている」

 そう、承諾してもらえれば。リアリム、君の答えが欲しい。どうか、私の婚約者となって欲しい。その為には、そろそろ、正体を伝える必要があるかもしれない、と。

 目の前の書類にため息をつきながら、次のお茶会まであと少し、と思うのであった。





 家に無事、送り届けられた私は酷く驚いていた。

 あの、ウィルティム様からキスされたのだ。その上、抱きしめられてしまった。
前世の記憶は遠くて、霞んでいる。今の身体で、初めて触れられたその腕の逞しさと、厚い胸板の感触が忘れられない。

「ハァ、あのキス。すごかった」

 温かい唇の感触を、思い出すたびにキュンとする。彼のテノールの声ではぁ、とキスの後についた吐息に、甘く囁く声。

ウィルティム様は私を口説く、と言われたけれどもう既に私の中に、彼は大きな存在になっている。けれど

「でもどうしようも、ないよね」

 いくら想っていても、相手は貴族ではない。その壁の大きさを改めて感じてしまう。

「でも、恋人関係も期間限定のことだし。もうちょっと、いいよね」

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