嘘つくつもりはなかったんです! お願いだから忘れて欲しいのにもう遅い。王子様は異世界転生娘を溺愛しているみたいだけどちょっと勘弁して欲しい。
どうせもう嫌われているのだから、開き直って美味しいものを美味しくいただきたい。

「君は、本当に甘いものに目がないんだね」

 まだ口の中にはタルトがいて、幸せを噛みしめていたのに、私はごくん、と飲み込んでから振り返る。

 そこにいたのは、いつも通り銀色の髪を輝かせて微笑むウィルストン殿下であった。

「殿下、殿下も欲しいのですか? では、どうぞ」

 やけになっていた私。プチ・タルトを一つとって、殿下の口元に運ぶ。
こんな無礼なことをすれば、流石に引くだろう。

 と思っていたのに、殿下も大きく口を開けると、パクっと私の手からタルトをそのまま口の中に入れた。


「――!!!――」


 冗談半分だったのに! 私の指までちょろっと舐めて、殿下は口をもぎゅもぎゅと動かしてからごくん、と飲みこんだ。

「うん、このタルトも美味しかった。君の手から頂くと、何でも美味しくなるようだね」

 舌をペロッとだして唇についた屑を舐める仕草は、何とも言えない色気がある。
ぞくぞくっとした寒気のようなものが背中に走る。

「そ、それは、良かったですわ」

 どどど、どうしよう。何故か殿下はくくく、と揶揄うような視線で私を見つめてくる。
そしてその殿下の向こう側には、また般若のお面を被ったようなイザベラ様の顔が見えた。

マズイどころではない。イザベラ様の背後には黒いものが見えるようだ。

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