嘘つくつもりはなかったんです! お願いだから忘れて欲しいのにもう遅い。王子様は異世界転生娘を溺愛しているみたいだけどちょっと勘弁して欲しい。
「いえ、すみません。つい愚痴を。っと、また殿下がこちらをみられているようなので、私は失礼しますね、リアリム嬢、健やかにお過ごしください」

「は、はい」

 何だろう、最後の方は意味がわからなかったけれど、もうお茶会を辞していいかな。
殿下とお話もしたし、最後まで残っているとまたイザベラ様に何か言われそうで怖い。

 途中退場を決めた私は、そっとガーデンの裏口を目指して歩いていく。
ガーデンの正面出口からは、とても出て行ける雰囲気ではなかったのだ。

 そうして私はひっそりと、華やかなお茶会の場を離れたのだった。





 普段は使わない裏口から宮殿に入ったため、少し奥に入り込んでしまった。

宮殿のパティオには、上から日差しが降り注いでいた。歩き疲れたので、その端に座って休む。
誰かが通りかかったら、声をかけて馬車置き場を教えてもらおう、そう思っていた時。

思わぬ人物から私は声をかけられた。

「すげぇ! ピンク髪だ! うひょー!」

え? 何? このしゃべり方、この世界にも、こんな軽薄な話し方をする人がいるの?

 振り返った私は、更に驚いてしまう。そこには蜂蜜色の髪をカールさせて、一見ボサボサに見える髪をそのままにしたブラウンの瞳の男性がいたのだ。

 私は一瞬、何故かその笑みに懐かしいような温かい気持ちが胸に込み上げてきた。

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