嘘つくつもりはなかったんです! お願いだから忘れて欲しいのにもう遅い。王子様は異世界転生娘を溺愛しているみたいだけどちょっと勘弁して欲しい。
「へぇぇ~、この髪の色、初めて見た。やっぱスゲェ、君、もしかして兄上の婚約者候補?」

 無邪気そうに笑うその人は、ウィルストン殿下を兄上と呼んでいる。と言うことは

「あの、失礼ですがもしかしてユゥベール殿下、ですか?」

 そこにいたのは、第二王子のユゥベール殿下であった。失礼のないように、淑女の礼をする。

「あ、そういうのは僕、いらないから。いいよ、面倒だし」

 彼はまた、変わったお方のようだった。正妻の子で、華やかな容姿をしたウィルストン第一王子に比べて、側室から生まれたユゥベール第二王子は、社交界にもめったに顔を出さない。

一部からは引きこもり王子と言われている。年齢は確か、私と同じ、18歳だったように思う。

「君、珍しい髪だよね。それに、その紺色の瞳。あ! もしかして、名前はリアリム?」

「へっ、は、はい。私はリアリム・ミンストンですが、ご存知でしたか? しがない伯爵家の娘ですが」

 私の話を聞いているのか、いないのか。
ユゥベール殿下ははぁ、とか、うん、そうか、とか。
何かぶつぶつと言って自分の世界に入り込んでしまったようだ。

「あ、あの、私はそれでは、失礼致します」

 王家の人と、これ以上接点を持ちたくない私は、その場を去ろうとそろり、そろりと後ずさった。
だが、その動きを見た第二王子が、はしっと私の腕を掴んできた。

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