嘘つくつもりはなかったんです! お願いだから忘れて欲しいのにもう遅い。王子様は異世界転生娘を溺愛しているみたいだけどちょっと勘弁して欲しい。
 私の名前を聞いた殿下は、ひゅっと喉をならして急に黙ってしまった。

「で、殿下? 殿下のお名前は」

 しばらく、沈黙の後に彼はそっと囁くように名前を教えてくれた。

「僕は、ヒシウチ・ユウ、だよ。母の名前はアイコ、父はテルヒコ。もしかしてリア?」

「ユウ、ユウ! もしかして、ユウ君?」

彼は、私の転生前の双子の弟の名前だった。

「リア!」
「ユウ君!」

 お互いにひしっと抱き合って、再会を喜ぶ。奇妙な記憶を持ちながら異世界で生きてきたのだ。
 ひくっ、ひくっと嗚咽交じりの声で泣いてしまうと、ユウはかつてのように頭をポン、ポンと撫でてくれる。

 かつてと違い、今世のユウは引きこもりとはいっても、身体は鍛えていたようだ。よく見ると、鼻筋も通っていてイケメン度が半端ない。このボサボサの髪と髭さえなければ。

 落ち着いてきたところで、お互いに記憶を照らし合わせる。特に、最後の場面。

「あ、もしかして。私たち、実家で同時に亡くなったから、同じ時に転生したのかな」

「そうかもね、リア。でも、どっちにしても、こうして会えたのは嬉しいね」

 不思議な感じがした。転生前の記憶は、もう既にうっすらとしか残っていない。
けれど、彼の笑顔は何となく覚えている。

お互い、大人になってからは別の方向に進んでいたから、会うことも少なくなっていたけれど。
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