嘘つくつもりはなかったんです! お願いだから忘れて欲しいのにもう遅い。王子様は異世界転生娘を溺愛しているみたいだけどちょっと勘弁して欲しい。
「ユゥクン? それは、ユゥベールの愛称か? この私でさえ、愛称で呼んでもらったこともないのに、部屋に二人で過ごしたこともないのに、アイツ、コロス……」

 えっと、最後何か恐ろしい言葉を聞いたのですけど。聞き間違いであって欲しい。

 もし、ウィルストン殿下がユゥベール殿下に怒りの矛先を向けて、私がアトリエに出入り禁止になってしまうとマズイ。というか嫌だ。

必死になって、ここは許してもらわなければ。私は言葉を繋げていく。

「あの! ユゥベール殿下は真摯に絵を描いているだけで、何もありませんっ!」

 そう言ってから、思わず殿下の片方の手を持って、胸の前で拝むように手を私の両手で包み込んだ。

「ほ、本当に、絵のモデルをしただけです。少しおしゃべりしましたが、それだけです! 手も触っていません」

 背の低い私は、殿下の手を持ちながら上目遣いで目をうるうるさせて見つめる。

その私の顔を見た殿下は、「うっ」と少し唸って私の目を覗きこんできた。

「私が触れるのは、殿下だけです、よ?」

 そう言って殿下の手を私の胸元に持ってくると、殿下はさらに目を泳がせるようにして息を一つ吐いた。

「君は、仕方ない。何をしているか、教えてあげよう。男を誘惑すると、こうなると覚えるんだな」

 そう言った殿下は、射るような視線で見つめながら、その白い手袋で私の頬を撫でる。

< 73 / 197 >

この作品をシェア

pagetop