嘘つくつもりはなかったんです! お願いだから忘れて欲しいのにもう遅い。王子様は異世界転生娘を溺愛しているみたいだけどちょっと勘弁して欲しい。
 手袋の布が滑るように私の頬から首筋に下がる。もう片方の手は、私がまだ両手で持ったままだ。

「で、殿下」

「黙って」

 そう言うと、細く長い人差し指で唇を抑えられる。

その布越しの手の熱さがもどかしい。殿下の手からは電流が放たれたように私の身体を流れ、私を痺れさせた。

その布をとって、直接触って欲しい、そんな欲求を覚える。

「君は、キスが好きだったよね」

 そう言って私の顎を持ち上げ顔を近づけてきた。キスされると思い、ギュッと目と唇を固く閉じる。

 でもウィルストン殿下は唇ではなく、額にチュっと唇を置いた。

 驚いた私が目を開けると、すぐ近くにアメジストの瞳が見える。

それは、一見優しそうに見えてその奥に獰猛な欲望を溜め込んでいるように見えた。

「リアリム、好きだ。私のキスを、受けて欲しい」

 そっと名前を呼びながら、柔らかい唇を額にもう一度押し当ててきた。そのまま目元に唇を落とし、頬や、鼻筋や、口角にもバードキスを落とす。

 こつん、とウィルストン殿下の額が私の額に当たる。片方の手が、私の後頭部に回り髪を優しく撫でつける。
 
 アメジストの瞳がすぐ近くで優しく見つめる。

「リアリム、いいね」

 私の了解を得ているようで、有無を言わせぬ口調でウィルストン殿下はまたも顔を近づけてくる。

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