嘘つくつもりはなかったんです! お願いだから忘れて欲しいのにもう遅い。王子様は異世界転生娘を溺愛しているみたいだけどちょっと勘弁して欲しい。
 さっきから心臓の音が痛いほど鳴っていた。怖いハズなのに。ここで殿下とキスしてしまったら、後には引けない予感がするのに、殿下の手を押しのけることができない。

 殿下のキスを肯定するかのように、私はまだ殿下の手を離すことができなかった。

 こんなに優しく、見つめながら囁かれると嫌と言えなくなる。

――ズルい、こんなに優しくされるなんて。

 私が落ちかけたその瞬間、後ろから声が聞こえる。





「ウィルストン殿下。そこまでですよ」

 側近のチャーリー様が、いつもの如く殿下を止めた。

 あと少しで唇にキスされるところだった。チャーリー様の声を聞いた殿下は、私の顔に近づけていた顔を上げて、射殺すように彼を睨んでいる。

「また、お前か、チャーリー」

 その言葉を聞いて、はっとした私はウィルストン殿下の手をパッと放した。今まで夢中になって握っていたが、そのことに気づいていなかったのだ。

 傍から見れば、私もまるで合意して殿下とくっついていたようなものだ。

 噂にでもなると、そのままなし崩し的に私が婚約者に選定されてしまうかもしれない。

「リアリム、私の想いを受け止めて欲しい。王子としてではなく、私個人として、」

 切なそうな瞳で訴えるようにウィルストン殿下は囁いてきた。

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