嘘つくつもりはなかったんです! お願いだから忘れて欲しいのにもう遅い。王子様は異世界転生娘を溺愛しているみたいだけどちょっと勘弁して欲しい。
 何と言っても、伯爵家を継ぐディリスお兄様は優しいし、私がお菓子を焼くのをとても楽しみにしてくれている。理想の結婚相手が、こんなにも身近にいた! と思うけれど。

「でも兄妹だから、仕方ないよね! ざんねぇ~ん!」

 マドレーヌの残りをまとめると、ディリスお兄様に渡す。少しはウィルティム様に届くといいのだけど、遠征しているのかな。

 休憩時間の終わる時間が近いから、お兄様に挨拶をして家に帰ることにする。

 私は今のさりげない会話が、どれだけディリスお兄様の心をえぐっていたのか、想像もできなかった。切なそうに私の後ろ姿を見つめているとは、思いもしなかったのだ。





 なんてことだ、妹のリアリムが知ることがないように、これまで必死になって隠してきたのに、やはり、人の口に扉を立てることはできない、のか、

 うなだれるように下を向き、今立ち去って行った妹の後ろ姿を思い出す。

 俺とリアリムは、兄妹ではない。俺の母がリアリムの母と従妹、ようするに、遠戚だ。
リアリムを産んだ後、体調を崩した伯爵の妻、俺の義母は、これ以上子どもを望めぬ身体であった。

 男児のいない伯爵家にとって、唯一の女児であるリアリム。

彼女が無事に育てばいいが、万一のことがあれば後継者争いとなってしまう。

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