嘘つくつもりはなかったんです! お願いだから忘れて欲しいのにもう遅い。王子様は異世界転生娘を溺愛しているみたいだけどちょっと勘弁して欲しい。
「くっ、君は本当に規格外だな。しかし、私にも騎士としての矜持がある。女性の純潔を奪って、そのままというわけにはいかない。リアリム嬢は、私と結婚することを考えられないのかな?」

「へっ、あ、いえ、もちろんウィルティム様と結婚出来たら嬉しいですけど、貴族ではない方と結婚することを、父が、伯爵家が許すとは思えなくて」

「そうか、では、ミンストン伯爵の許しがあれば、俺と結婚してくれるか? 俺がたとえ、どんな立場の男であっても」

「はい、父とか、ディリス兄さまとかが許してくだされば、嬉しいですねぇ、」

 どうやら酔いが回ってきているみたい。そんな夢物語、可能だろうか。私が貴族籍を抜けて庶民になることは構わない。けれど、それによって伯爵家がどれだけダメージを得ることになるか。考えるだけで恐ろしい。

 またエールをぐいっと飲むと、ジョッキが空になる。お代わりを頼もうと思ったところで、ウィルティム様が私の手を止めた。

「ちょっと、待ってくれ。今、この紙にサインして。ここ、そう、今君が言ったことを証明するだけだから。俺がどんな立場であっても、ミンストン伯爵の許可があれば結婚する、ってこと」

 ほわほわしているうちに、気が付いたら書面に血判を押すところまで用意された。

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