八城兄弟は僕(=わたし)を愛でたい!
 帰りの電車では、男の碧に戻っていた。髪型も服装も体も。

 家の近くで、誰かに見られたらいけないから。まるで、シンデレラの魔法がとけたみたいにーー。

「今日は、ありがとうございました。なんだかんだ楽しかったです」

「そう、なら誘ってよかった」

 ふわっと笑った顔が、いつもの整った表情じゃなくて。琥珀さんの優しさがにじみ出ていた。

【バラされたくなかったら】
 あんなおどすようなセリフを使っていたけど、本心は違う気がする。

 迷子になりかけていたわたしの心を、一緒に探そうとしてくれていたのかな。

 人たらしで、ちょっと軽いところがあるけど、琥珀さんは優しくて頼れるお兄さんだ。
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