魅了たれ流しの聖女は、ワンコな従者と添い遂げたい。
 そう思っていると、カイルが自分でもあまり触ったことがないところに触れた。

「あんっ」

 へんな声が出て、慌てて口を塞ぐ。
 カイルが私の頬をなでて、「可愛いですよ」と微笑んだ。
 微笑んだ!
 ちょびっと口角を上げただけだけど、絶対、笑みを浮かべたの!
 
 感動していたのに、カイルが指を動かすと、快感に頭が支配されちゃって、訳がわからなくなる。

「あ、んっ、ああ……カイル……カイル……早く結ばれたい……」

 そう言って、彼にすがりつく。
 私の懇願にピタッとカイルは手を止めた。

「本当にいいのですか?」


 熱い瞳のカイルがじっと私を見つめた。
 その視線の熱に背筋がゾクゾクして、思わず、息を呑んだ。
 それをためらいだと思ったのか、苦しげな顔でカイルが聞いてきた。

「やめますか?」
「やめない! 私はカイルと結ばれたいの!」

 きっぱり言うと、カイルがまた喉を鳴らした。

「アイリ様、愛しています」

 そうささやいて、カイルは私の中に入ってきた。
 私たちはピッタリくっついて、痛くて苦しかったけど、幸せだった。
 私はカイルの背中に手を回して、ギュッと抱きついた。
 カイルの唇が目もとに落ちてくる。
 いつの間にか、滲んでた涙をそれで拭ってくれる。

「愛しています」

 超至近距離でカイルがつぶやいて、キスをくれた。

 ポタポタ……。

 顔に水滴が落ちてきた。
 なんだろうと思ったら、カイルが泣いていた。
 真顔なのに、涙だけボタボタ流している。
 指でそっと拭ってあげると、口を離したカイルが自分の手で目を擦った。
 自分の涙に驚いた顔をして、慌てて、私の顔に落ちた涙を拭う。

「すみません……。アイリ様の初めてをもらったと思ったら、感慨深くて……」
「これで私たち結ばれたの!?」

 勢い込んで聞くと、カイルが困った顔をした。
 さっきから、感情表現がわかりやすくなっている。

「結ばれたというか、まだというか」

 私は少しがっかりした。
 こんなに痛い思いをしたのに、まだだなんて……。
< 58 / 79 >

この作品をシェア

pagetop