華夏の煌き
「確かに、星羅の男装も板についてる。まず女人だと思われないだろうな」
「そうなの。見習いの二人は気づいてないみたい。でもね一人わたしが女人だと最初からわかってた人がいるの」
「へえ。それはすごいわね」
「でもその人はその格好のほうが安心だろうねって」
「なかなかの好人物だね」
「ええ、厩舎の馬の世話をしてくれていて、優々がとても懐いてるの。あ、もう行かなきゃ。またね京にい」

 慌てて食卓を立ち、星羅は包みを小脇に抱えた。

「いってらっしゃい」

 透き通った微笑みを見せ、そよ風のように家を出ていった。可憐な男装の後姿を見送ったのち京樹は深いため息をついた。

「まあまあ。ほんとうにどうしたの?」
「ん。ちょっと考えることが多くて疲れたのかも」
「そう……。よく休んでね。もっと食事に香辛料を増やそうかしら」
「それは元気になるよ。ねえ、母様と父様は西国に戻りたいとは思わない?」
「え? 西国へ? それは、そうね。いつか戻れたらいいわね」 

 京樹はこの華夏国の危機を家族であっても話すことはできない。もしかしたら華夏国と運命を共にすることもあるのだ。京樹自身は、生まれたのも育ったのも華夏国なので、西国に望郷の念はない。むしろ太極府こそ自分の居場所であり、活躍できる場なので忠誠を尽くす所存だ。
 星羅の存在も大きい。彼女はもちろん華夏国の主要人物となっていくだろうし、この国を離れることはないだろう。華夏国と星羅を京樹は支えていく覚悟だ。
 しかし彰浩と京湖は西国で生まれ育ち、この国が好きで来ているのではない。両親の事情は京樹も星羅も知っている。京樹は秘密裏に西国の星も観察している。ちょうど華夏国が危機を迎える年に、西国にも変化が起きる。その変化はどうやら国民にとっては幸いなことで、国が亡びることではないようだ。
 この危機に瀕する華夏国から西国へ戻ることを、両親に進めるべきか京樹は悩んでいる。

「いきなり西国の話なんてどうかしたの?」
「いや。どんな国なのかなって」
「そうねえ」

 スパイスやら香やら花など華夏国と違って薫り高い国のようだ。常に暑く、気質は短絡的だが明るく大らかしい。しかし未だに生まれつきの身分差別がひどいことが西国の汚点であると京湖は話す。

「父様は西国の人らしくないね」 
「ええ、代々陶工で、国境付近で暮らしていたから少し違うわね」

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