華夏の煌き
 陳賢路は彼こそが自分の後継者にふさわしいと思っているが、残念ながら異国の民である。また国家がどうなっているのかもわからない。とにかくここ数年で今まで何百年と続いた王朝に異変があるかもしれない。
 太極府のものは占うことしか行わない専門機関なので、華夏国の王朝が数百年で交代してきたことを知ってはいるが、重きを置いてはいない。
 歴史的な見解で王朝交代を考察するのは図書館と学舎に属する長官たちだが、そのような話も出てきてはいない。地質を調べている機関からも、大陸に大きな変動は見られていない。
 唯一、太極府が、朱京樹が異変を感じ取っているのだ。数年早く異変がみられることが分かっただけでも救いかもしれない。

「晶鈴がいればのう……」

 今の時点で国家のほころびがあれば、胡晶鈴の鑑定で分かったかもしれない。

「いやいや」

 陳老師は首を横に振る。胡晶鈴は、自分の代わりにこの星読みのエキスパート、朱京樹を連れてきたのかもしれないと不思議な縁を感じた。
 彼女の娘、朱星羅は母親の血を受け継がなかったようで占い師としての資質はない。占い師とは代々受け継がれるものではないようで、この太極府にいる者たちもみな、親族に占い師がいるわけではなかった。

「さてと」

 陳賢路も立ち上がって、夜空を見るために外にでる。目を凝らし、空を見る。ここ何年か目の衰えにより星の瞬きが見えなくなっている。国家と王の星の色の変化を、京樹のように見出すことはできなかった。それでもなお空を見続ける。

「星は美しい」

 月は満ち足りかけたりして、不安を感じさせる。その点、星は暗闇の中に埋もれてしまわずに光る。陳賢路はどんなに辛く苦しい時でも星を見れば、希望が湧くと信じていた。 
 
57 故郷
 早朝、支度を終え朝食を食べているところへ、すれ違いの生活だった兄の京樹が帰ってきた。

「京にい、どうしたの? なんだか疲れてる顔ね」
「そんなことないさ」
「ほんとう? 京樹、星羅の言う通りやつれているように見えるわ。眠る前に粥をお食べなさいな」
「ん、じゃ少しだけ」

 京樹は食欲はあまりなかったが余計に心配されるといけないと思い、星羅の隣に座り粥を待つ。ことりと湯気の立つ器を置いた京湖は二人を見比べふっと笑む。

「息子が2人にみえるわね」
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