華夏の煌き
「ほらご覧。華夏国は大きいが、世界はもっと広いのだ。浪漫国はこの砂漠を越えたここにある」
「こんなところに……」

 改めて地図を見ると、浪漫国はとても遠く過酷な旅になることが分かった。

「晶鈴殿のことじゃ。元気でちゃんとやっておろう」

 慰めのような、それでいてそうだと思わせるような話しぶりを、誰もがする。母の胡晶鈴はきっと誰からも絶望を感じさせることのない人なのだと思う。悲観的にならないようにと、いつもいない母から励まされるような気がした。

 いつでも来て良いと言われ星羅は図書館を後にした。地理と言葉を身に着け、軍師見習いから助手になることが今、星羅の目指すところだった。


 張秘書監は空色の衣の星羅を、立派な孝行息子だと思い眺めていた。

「しかし彼は陸殿の息子ではないのだなあ」

 父親が誰なのか張秘書監は知らない。都を出る理由になった、占術の能力を失った原因がそもそも妊娠であったことも知らないのだ。
突然、現れた朱星雷を見れば、胡晶鈴の面影がありありとみえ、彼女を知るものは誰もが晶鈴の子と思うだろう。
 ただ父親の面影がまるで見えない。男装をしているので、父親から受け継いだ美しい漆黒の髪はすっかり隠されている。おかげで、各省のトップたちは、王太子、曹隆明によく会っているにもかかわらず、星羅の父親であるとわかるものは誰もいなかった。
< 126 / 280 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop