華夏の煌き
声を掛けてはいるとふっくらとした赤ら顔の張秘書監が「うむ。ここへ参れ」と椅子を勧める。腰掛けた星羅を張秘書監はじっと見つめる。
「名は?」
「朱星雷と申します」
「母上によく似ておるの……」
「え? 母をご存じですか?」
「ああ、よく知っておる」
張秘書監は懐かしむような様子を見せる。
「軍師省からじゃなくて、医局長の陸殿から紹介状が来たから何かと思えば。彼は確か晶鈴殿と親しかったな」
しばらく張秘書監から昔話を聞いた。陸慶明とはまた違う胡晶鈴の話は、星羅にとって新鮮でありがたいものだった。
「晶鈴どのは欲のないお人でなあ。今のわしがこうして安穏としてられるのも晶鈴殿のおかげじゃろう」
慶明にも張秘書監にも好かれていたのだと思うと、星羅は自分の母が誇らしい気持ちになる。
「あ、そうじゃそうじゃ、思い出話はこれくらいにしてと、ほらここに浪漫国の資料がある」
棚を見ると何層もの動物のなめされた皮があった。
「これが書物ですか?」
「ああ、浪漫国では羊皮紙といってなこれは山羊の皮を使っておる。これもなかなか便利でな。軽いし遜色がなく、かなり耐久性が高い」
「へえー」
机の上に何枚か広げた羊皮紙を眺める。
「変な形がいっぱい書かれてますね」
「ふふふっ。それがその国の文字なのだ」
「これが文字ですかあ」
「我が国の漢字よりも、覚えると簡単で使いやすいのだよ」
「あの、これが読めるのですか?」
「まあ一応な」
張秘書監は語学に堪能で、浪漫国のラテン語を読み書きすることができた。
「ただ話せないのだ。音がわからないのでなあ。だから手間がかかるが筆談になるの」
「いえ、それだけでも十分です。全く伝わらないよりも」
「で、これがわしが作った中浪辞典じゃ。まさか使われる日が来るとおもわなかったが」
はははっと張秘書監はふっくらした腹をさすって笑った。星羅はそっと中浪辞典に触れる。巻物ではなく蛇腹に紙が交互に折り重ねられていた。
「これは持ちだしても構わん。ただ一冊しかないので丁重に扱ってもらいたい」
「わかりました。書き写したらお返しします」
「それと、これは晶鈴殿にも渡したものだが」
折りたたまれた紙を広げると華夏国と西国、浪漫国と他の諸国などが描かれていた。
「地図は見たことがあるかね?」
「華夏国と周辺までしかありません」
「名は?」
「朱星雷と申します」
「母上によく似ておるの……」
「え? 母をご存じですか?」
「ああ、よく知っておる」
張秘書監は懐かしむような様子を見せる。
「軍師省からじゃなくて、医局長の陸殿から紹介状が来たから何かと思えば。彼は確か晶鈴殿と親しかったな」
しばらく張秘書監から昔話を聞いた。陸慶明とはまた違う胡晶鈴の話は、星羅にとって新鮮でありがたいものだった。
「晶鈴どのは欲のないお人でなあ。今のわしがこうして安穏としてられるのも晶鈴殿のおかげじゃろう」
慶明にも張秘書監にも好かれていたのだと思うと、星羅は自分の母が誇らしい気持ちになる。
「あ、そうじゃそうじゃ、思い出話はこれくらいにしてと、ほらここに浪漫国の資料がある」
棚を見ると何層もの動物のなめされた皮があった。
「これが書物ですか?」
「ああ、浪漫国では羊皮紙といってなこれは山羊の皮を使っておる。これもなかなか便利でな。軽いし遜色がなく、かなり耐久性が高い」
「へえー」
机の上に何枚か広げた羊皮紙を眺める。
「変な形がいっぱい書かれてますね」
「ふふふっ。それがその国の文字なのだ」
「これが文字ですかあ」
「我が国の漢字よりも、覚えると簡単で使いやすいのだよ」
「あの、これが読めるのですか?」
「まあ一応な」
張秘書監は語学に堪能で、浪漫国のラテン語を読み書きすることができた。
「ただ話せないのだ。音がわからないのでなあ。だから手間がかかるが筆談になるの」
「いえ、それだけでも十分です。全く伝わらないよりも」
「で、これがわしが作った中浪辞典じゃ。まさか使われる日が来るとおもわなかったが」
はははっと張秘書監はふっくらした腹をさすって笑った。星羅はそっと中浪辞典に触れる。巻物ではなく蛇腹に紙が交互に折り重ねられていた。
「これは持ちだしても構わん。ただ一冊しかないので丁重に扱ってもらいたい」
「わかりました。書き写したらお返しします」
「それと、これは晶鈴殿にも渡したものだが」
折りたたまれた紙を広げると華夏国と西国、浪漫国と他の諸国などが描かれていた。
「地図は見たことがあるかね?」
「華夏国と周辺までしかありません」